抗肥満薬 エーザイのBELVIQ、心血管アウトカム試験のインパクトは?

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出典: 抗肥満薬 エーザイのBELVIQ、心血管アウトカム試験のインパクトは?|DRG海外レポート
発行元:AnswersNews
発行日:2018年9月19日

心血管イベントは増加せず

肥満症治療薬にとって、減量効果だけでなく心血管疾患に対するメリットがあることを証明するのは非常に重要だ。単なる「美容目的の痩せ薬」という肥満症治療薬に対する汚名を返上することができればいいのだが…。
――米国のソートリーダー

エーザイの「Belviq」に関する心血管疾患アウトカム試験(CAMELLIA–TIMI 61)の結果が明らかになった。8月にミュンヘンで開かれた欧州心臓病学会で発表され、続いてNEJM誌にも掲載。肝心の結果はというと、Belviqを長期に投与した場合、プラセボとの比較で心血管疾患に対するメリットは示さなかったものの、心血管イベントのリスクを増大させないことが確認された。

肥満症治療薬の分野が、30年近く前に「Fen-Phen」が引き起こした副作用問題を未だに引きずっていることを考えると、心血管安全性についてプラセボに対する非劣勢を証明できたことは、それ自体、重要かつ画期的な出来事だと言える。

大手メディアはこの結果を受け、Belviqを肥満症との闘いにおける「聖杯(至高の目標)」と讃えた。ただ、世界的に広がる肥満の問題に取り組む上で、Belviqが特効薬となることはなさそうだ。

 

海外レポート肥満症1

販売は低迷

Belviqは2012年6月に米FDA(食品医薬品局)の承認を取得し、13年に米国で発売された。一方、13年5月には欧州での申請をアリーナ社(エーザイの当時の開発パートナー)が取り下げている。EMA(欧州医薬品庁)は、発がん性、抑うつなどの精神障害、心弁膜症のリスクについて懸念を示した。

CAMELLIA–TIMI 61試験では、自殺念慮がBelviq群(N=5995例)で21例、プラセボ群(N=5992例)で11例認められた。エーザイは「自殺念慮または自殺行為の件数に不均衡がみられるが、これはベースラインで抑うつが認められた症例数の差によるもので、その他の症例については釣り合いがとれているように思われる」と報告している。

Belviqは当初、抗肥満薬としては売上高トップで、2014年には年間販売額が約5000万ドルに達した。しかしその後は、Belviqより減量効果が高い上、値引き幅も大きいほかの薬剤に患者を奪われ、売上高は減少している。Belviqはこの不振から一度も抜け出せていない。売り上げは今も低迷しており、あまり評判のよろしくないXenicalとほぼ同じという状況になっている。

「減量効果不十分」の指摘も

減量は1つの効果だが、この薬が心血管疾患アウトカムの点でも患者のメリットとなる別の力を発揮しているのなら、素晴らしいことだ。まさにこのことが大変重要なのである。
――ドイツのソートリーダー

Belviqが心血管疾患イベントのリスクを増大させないと証明できたことは、間違いなく一歩前進であり、米国での売り上げもわずかながら改善されるだろう。しかし、Decision Resources Groupが取材した欧米のKOL(キーオピニオンリーダー)たちは、「Belviqの安全性プロファイルは許容できるが、実際の減量効果は不十分なことが多い」と言うことも珍しくない。

実際、CAMELLIA–TIMI 61試験では、Belviq投与群の体重減少はわずか4.2kg(プラセボ群は1.4kg減少)で、体重減少率は平均4%と、治療ガイドラインで推奨されている5~10%を下回った。また、発がん性への懸念に加え、Belviqが中枢神経系に及ぼす作用をめぐる問題も未だ解明されていない。

欧州再申請の可能性は低い

こうした点を考慮すると、エーザイがこの先、欧州でBelviqを再申請する可能性は極めて低く、Belviqの収益源は米国やメキシコ、ブラジル、台湾など数カ国に限られると予想される。

エーザイやノボノルディスクのような大手企業は、大規模なCVOT試験を行うだけの資金を持っているが、中小のライバル企業は苦戦し続けることになる。ヴィーバスは最近、「Qsymia」の心血管安全性を証明する臨床データのレトロスペクティブ分析結果を発表した。FDAが要求する、費用のかかる長期市販後CVOT試験の負担を軽減しようとする動きだ。

複数の企業が肥満症治療薬の開発に乗り出しているが、次のような問いは残されたままだ。

競争が激化していくマーケットで、医師や患者、そして保険者は、どれほどの間、効果が不十分で安全性プロファイルに疑念のある医薬品を許容できるのだろうか

【AsnwersNews編集長の目】

エーザイが米国でBELBIQを発売したのは2013年6月。米国で13年ぶりの肥満症向け新薬として期待を集めたものの普及は鈍く、売上高は13年度25億円、14年度54億円、15年度44億円、16年度37億円、17年度36億円と低空飛行が続いています。16年10月には米国で1日1回投与のBELVIQ XR(従来は1日2回投与)を発売しましたが、これも弾みとはなりませんでした。

BELVIQは現在、米国とメキシコ、ブラジル、台湾などで承認を取得。日本では臨床第1相試験を実施中で、今年8月には、台湾でBELBIQを開発・販売するCY Biotechに中国での独占的開発・販売権を付与する契約を結びました。

肥満症治療薬をめぐる日本企業の動きとしてはこのほか、武田薬品工業が2016年、米オレキシジェンとCONTRAVEに関する提携を解消。さらに武田は、日本で承認を取得したオブリーンの薬価収載を断念し、同剤の権利を導入元に返還しました。オブリーンは13年9月に承認されましたが、同年11月の中央社会保険医療協議会で体重減少効果の弱さが議論になり、薬価収載が見送られていました。

市場性が期待されながら、効果や安全性の面で普及が進まない肥満症治療薬。ノボノルディスクをはじめ複数の海外大手が新薬の開発を行っていますが、果たして市場は開かれていくのでしょうか。

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事「Heart of Gold: Belviq and the Emerging Cardiovascular Outcomes Data for Obesity Pharmacotherapies」を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

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